それではキャバクラに飲みに来るお客さんが女の子に求めてる事。これはもう人によって様々ですが、雛子の少ない経験上の印象を比率にすると大体 1.男同士の付き合い+α、場の盛り上がりと華やかさを求めて‥‥30% 表面的にはこんな感じになるかな。もちろん雛子は女なので、男のお客さんがその胸のウチで何を考えてらっしゃるのか本当の意味では理解不能なわけですけれども。 これは女の子サイドの話、1.のお客さんと言うのはいわゆる潜在的市場ってやつですね。女の子の腕次第では2、3に移行する可能性を秘めてる。そして一番接し易くありがたいお客さんというのが2.あしらうのに多少の労力を要し、場合によっては非常に「ウザい」ことになるのが3.但し、2.3.の境目と言うのもかなりあいまい。女の子としては3.を色恋営業で引っぱっておいてだんだん態度を変化させ、なんとか2.に移行させるとか、その辺のテクニックも必要になってくるわけです。あーあ、大人ってやあね。 ## 半年以上勤めた八王子のお店をやめる直前の出勤日。今まで雛子を指名してくれてたお客さんが次々にお別れをしにきてくれました。 やめる事をちゃんと報告して挨拶するってのは、まあそれなりに通ってくれてたり同伴してもらったりして親しくなっていたお客さんたちです。色恋営業は避けるように頑張っていたんですが、どうしてもそれに近くなってしまいがちな雛子の悪い癖で、告白されてしまって、断って、それで疎遠になってしまうのでなかなかお客さんとのフラットな関係を続けるのには苦労しました、そんな中最後までのこってくれた方達には本当に感謝してるんだよ。 でもね。皆さんに同じように接客していても、こちらの胸のうちは多少ばらつきがあったりして。 「残念だなー、ねえ、これからも時々でいいからつきあってよ、だめかなあ。また面白いお店探しておくからさ」 「あー、やっとやめるんだー。キャバ高えよ、これからはプライベートで遊ぼうよ。やめるんなら暇になるでしょ?毎日電話しちゃうよー」 「これでもう雛ちゃんとはお別れかー。寂しいなー、いつでも戻って来なよ」 「寂しいなあ。寂しいなあ。ねえ、一緒に写真とっていい? 今日だけでいいから、お店の後つきあってよ。今日だけは、朝まで一緒にいてよ。大丈夫だよ、何もしないから。ね?ね?」 「あーせいせいするよ、これからは日替わりで違う子指名できるもんね。」 「また、雛子みたいな子見つかるかなあ。難しいだろうなあ。また、どっかで始める時は絶対電話しろよな、また指名してやるからさ」 お店をやめてからも八王子に住んでいた時は、繁華街をあるいているといつものメンバーと一緒に楽しげに、若しくは一人で背中を丸めて歩いているMさんを何度か見かけたりしました。どっかのキャバクラでまたお気に入りの子を見つけたのかな、とか思うとちょっとジェラシー。「おー、元気か」なんて声をかけてくれたりすると本当に懐かしくて嬉しくなる。そこで、「一緒に飲みに行くか?」なんて決していわないMさんだからこそ、雛子は今でも大好きなんだ。もし誘われたら、多分飲みくらいはつきあってしまったりするでしょう。でも今はもう、お店という私たちを繋いでくれてた場はないし、現実世界でつながってしまったらきっとお互いのお互いに対するバランスはあやふやになってしまうし結局、あの頃みたいな楽しい時間はもう決して戻らないんだ。Mさんはそのことをちゃんと知ってる。そしてそのことは、お互いにとって全く大した事じゃない。そういうちょっとした切なさにこそキャバクラの醍醐味があるんだと雛子は思います。 ‥‥‥‥んー。多少の本音が。でもこの感覚、わかってもらえるだろうか? お客さんはお客さん。一度お金を払ってもらって成立した関係は、滅多な事じゃ他のものにかえることはできない。 |
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